家族法Q&A

婚姻

ダブルインカムノーキッズ

最近、ダブルインカムノーキッズという世帯が増えています。

 

この中で、新・DINKSという社会的実態が出てきています。

 

DINKSといえば、共働きでこどもがいないので個人の消費が楽しめることに力点がありました。

 

ところが、最近は、別々に貯金をして、生活費口座に出し合っている、としたうえで、残りのお金は自由に使い、お金については話すのは一緒に行く旅行や引っ越しのときだけといいます。

 

例えば、藤沢久美子さんは航空管制官をしており、夫の大地さんは、大手町のコンサルティング会社に勤務していて、新・DINKSといえます。

 

久美子さんは、もともと父親が資産家で、立教大学に小学校から通っていました。実家にもしばしば帰省をしますが、小学校から持ち上がりのクラスによる家族とよく似た関係の友人がたくさんいます。

加えて、久美子さんは、航空管制官で羽田空港に勤務しているため、勤務時間帯も不規則です。

 

他方、大地さんも、祖父が元政治家であったので二男である自分は実家の跡継ぎになるつもりはないようですが弁護士資格を有していることもあり政策秘書歴もあり、交際の幅は政界にもわたります。

大地さんも慶応大学に小学校から通っていましたので、持ち上がりのクラスや同窓会の出席・幹事などに忙しくしているようです。

 

久美子さんと大地さんは、結婚するにあたり、名古屋駅ヒラソル法律事務所で、婚前契約を締結しました。弁護士からは婚前契約をしていても、途中からお子さんが欲しくなる人もいますよ、という説明を受けますが、両者の意思はかたいようです。

そこで、久美子さんと大地さんは結婚前でないと、DINKSに沿った夫婦財産制をとることができないと聴いて、婚姻前に弁護士に相談をしました。そこで夫婦財産契約というものを締結することになりました。

夫婦財産契約ですが、婚姻前に締結したうえで登記をすることが要件となっていますが、婚姻前に締結された夫婦になる前の男女間での夫婦間財産契約は夫婦間においては効力を持ちます。

 

実例として多いのは、DINKSのように、ダブルインカムの場合、夫婦共有財産とはせずに個々の帰属とするものや婚姻中の債務負担のありかたを定めるものが考えられます。久美子さんと大地さんは、マンションは賃貸とすれば良いので大きな負債を負うこともないので登記は必要ないとして、登記をしないまま公正証書で婚前契約書を弁護士に作成してもらうことにしました。

 

現在、DINKSをめぐる紛争は多い。

 

DINKSの方の場合、内助の功というものはありません。あるのは、対等平等のパートナーシップであり、得手不得手はあるにしてもすべてに参加してもらうという自律したものといえるかもしれません。

 

久美子さんは、夜遅くまで残業をする大地さんの収入は知りません。なぜなら、家賃や生活費に加えて、ときどき一緒にいく旅行・外食の支出分のみ話し合えば足りるので、全部知る必要はありません。また、久美子さんは、生前贈与された預金などを持つため貯蓄を大地さんに知られることを嫌っています。

 

大地さんも小遣い制というのはあり得ないと考えているようです。そして、大地さんは祖父の養子になっており実父を失った生命保険金を得ているなど特有財産も多く、収入はもちろん貯蓄も特に久美子さんに公表する必要はないと考えているようです。

 

このような場合、上記の婚前契約がないと、婚姻期間に形成された財産は特段の事情のない限り、夫婦共同財産の推定を受けます。しかも、財布をバラバラにしてきたため、いざ財産分与が争点になった場合、どこに財産があるのか、あるいは、特有財産制の証明が大変となります。結婚前に離婚時のことを決めておくということは夢のないようなことのようにも思えますが、資産家の場合や所得が多い方が結婚される場合は、裁判上、自分の財産であることの証明=特有財産制の証明を省くことができます。したがって、「双方の収入は共有財産とはみなさず、各々の特有財産に帰属する」という婚前契約を締結することなどが考えられます。

 

本件では、婚前契約があれば、久美子さんと大地さんが離婚することになっても、財産分与をする必要はなくなります。

 

しかし、DINKSは、独身世帯が2つあるだけ、とも考えられやすいため、不倫や両者の間にもこどもをもうけるということがでてくるという事情の変更が出てきます。

 

その後、久美子さんと大地さんは、久美子さんが国交省の本省勤務になったことをきっかけに産休をとりやすくなったことから、希峰くんと那由多くんをもうけました。

 

こうして、大地さんは自己のコンサルタント収入や収益物件の収入を久美子さんに開示して、一定金額を生活費としていれる方式で、家計を久美子さんに預けるようになりました。

 

その後、大地さんもコンサル活動に制限をかけて育児に協力をしたため、大地さんの収入も減ってしまいましたが、その間の収入は大地さんの収入でまかなわれていました。

 

久美子さんが仕事復帰した後、両者は給与所得は開示し合って、希峰くんと那由多くんの教育プランを話し合うようになりました。その結果、給与所得は、事実上、家計を管理する余裕のある久美子さんがするようになりました。

 

しかし、その後、コンサル収入は歩合制であるため、所得に変動のある大地さんを責めるようになり、大地さんと久美子さんは口論が絶えない状況となり、大地さんと久美子さんは離婚することになりました。

この場合でも、夫婦財産契約不変更原則があるため、離婚する場合には、おそらく久美子さんと大地さんとの間では、財産分与は行われないということになるでしょう。しかし、久美子さんは、資産家とはいえ、こどもをふたり引き取ることになりましたので、夫婦共同財産の分配を受けられると生活に資すると思いますが、例外の手続(家事事件手続法150条2項)の調停等、夫婦間の協議で財産分与をすることもできないことになります。

 

この結果、大地さんは、財産分与は、夫婦財産契約不変更原則があるので応じられないとして、久美子さんが得られる離婚給付は少ないものとなってしまいました。

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