控訴趣意書
刑事事件で控訴を申し立てた場合、控訴趣意書を差し出す必要があります。
さて、これらは民事事件にも共通するところかもしれませんが、控訴趣意書も弁護人により様々ですが、多くは2~3行で終えているものも少なくありません。
裁判所に判断を投げてしまっており、かつ、裁判所が記録を精査し破棄された例もありましたから、その程度といわれる可能性もあります。
しかし、基本的には、論旨を定め、そこを中心に控訴趣意は編んでいくものと考えられます。表面的なことは良いのですが、判決の内在的論理の延長線上で、その論理に歪みがないか、論理に飛躍がないかを本来は点検するのが良い趣意書といえるのかもしれません。原判決が文字を割いている部分に弁護士は着目します。論理が弱いため、いろいろ言い訳をいう必要があるからですが、争点・疑問点に対する判断にあたって、どのような事実・証拠をあげているのか、ということです。
ポイントは
・証拠がないのか
・証拠が信用できないのか
・考慮すべき証拠・事実を無視しているのか
・証拠から事実を認定している
・事実から事実を認定している経験則、論理則が間違っているのか
です。
事実誤認のポイントは、事実認定の証拠及び論理の構造ということになるが、ポイントは以下のようなものです。
・事実を認定している証拠は何か
・証拠が信用できる理由は何か
・どの証拠とどの証拠で事実を認定しているのか
・証拠の価値に違いはあるか
・中心となっている証拠は何なのか
・どの事実とどの事実で上位の事実を認定しているのか
・事実の推認力に違いがあるのか
・中心となっている事実は何であるのか
意固地になっている判決にありがちなのは、弁護人の主張を一つ一つ取り上げて否定する手法ですが,こうした判決は論理に一貫性がないことが多いといえます。
さて、多くの控訴趣意書は、量刑不当を骨子としています。しかし、かつての原田國男裁判官のように、現時点では、判決は重すぎるに至ったのであって,破棄して更に判決を言い渡す、というきざみ判決にいくぶん救われた弁護人や被告人も多かったと思いますが、法律が改正されたわけでもないのに、裁判所のトレンドは「きざみ破棄」をするのに否定的という立場をとりつつあります。
ですから,そもそも一審の量刑がおかしいんだよね、ということを論理的に論証する必要があります。これは、原審の情状事実を争うということになりますが、原判決が情状事実を誤認したという場合と、原判決が被告人に有利な情状事実を認定していないというものです。
併せて、共犯者それぞれの役割分担の具体的内容についての事実認定を争ったり、共犯者の地位等に関する評価を争うなど、事後審としての立場が徹底される以上、単に、判決を受けて、さらに判決が深まったから、では足りないということになります。例えば、原審の重要な情状事実はおかしいと、一般情状を過大視して悪性格を理由に重い刑罰を科していると争う場合がある。