弁護士コラム

刑事訴訟法

証拠と事実の対応関係

第21編 証拠と事実の対応関係(読本Ⅰ113)

第1 証拠の目的性

① 要証事実や争点内容を意識する

② 当該証拠がどのような事実関係を明らかにしようとしているのか

③ その事実にはどのような法的意義があるのか

* 通常,訴訟当事者の立証趣旨は,「○○の事実等」とざっくりとした記載があるにすぎない。したがって,当該証拠が法律上のどの要件のための証拠であるのか,当該要件に関するどのような事実に関係する証拠であるかということは改めて意識的に検討することが必要(読本Ⅰ113)

 

第2 事実構造による証拠の偏向

1 傷害事案

(1) 争点

たいてい犯行状況が争われる

* 暴行の態様,回数といった構成要件該当事実が争われることもあれば,正当防衛の成否が問題になることも少なくない

(2) 証拠

被害者が殺人と異なり生きているわけだから,たいてい被害者の犯行状況についての供述が出てくる

⇒ 被害者の供述の信用性が重要なポイントになる

2 窃盗事案

(1) 争点

たいてい被告人の犯人性が争われる

(2) 証拠

ア すりや万引き

被害者以外の第三者の犯行現認供述が多いのでその信用性が問題

イ 侵入盗や車上狙い

犯行現認供述はないので,被告人が被害品様の物を所持していたことや,被告人の痕跡が犯行現場に残されていたこと,被告人には排他的に犯行の機会があったこと-などの情況証拠が多い

ウ 放火

犯人の放火行為自体が目撃されることは少ないので,情況証拠が中心

* 放火事案では,放火性と犯人性が争点となることが多い

* 放火事案では,「失火ではないか」は常に重要なポイントとなるので,出火原因を考えるにあたり,現場の状況が重要

 

第3 検討

起訴状と証拠等関係カードに記載された検察官請求証拠の一覧をみれば,ある程度,事案の構造は想像できる

⇒ 検察官の立証の構造の大枠を意識しながら検討する!!

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