金沢の白山警察の違法捜査とヤメ検の不当介入の可能性が示唆された事例
当弁護人が担当してきた裁判で、名古屋地裁一宮支部は平成29年6月14日付で、金沢県白山警察署の違法捜査を指摘し、また違法の可能性がある部分を指摘したので、紹介したいと思います。
ヤメ検の不当介入の可能性について
「X弁護士が元検事で警察学校で行使を務めたこともあるなどの事実は認められるものの、白山書や金沢地方検察庁を支配するなどこれらの組織に対して特に強い影響力を有していたというようなことは窺われ」ない。反対にいえば、情実的に影響を及ぼす可能性は認めたものといえるでしょう。特に組織を退官した人間が組織を支配し特に強い影響力など持ちようがなく、「忖度」「事実上の指示」があったかなかったかどうかが問題で、一宮支部の村瀬賢裕裁判官は「論点ずらし」をして逃げたというべきでしょう。
ファックスを原本と偽って逮捕した点について
白山警察署の「北川巡査が犬山署でとった逮捕手続は「急速を要するとき」(刑訴法73条3項)という緊急執行の要件を満たしておらず、被告人の逮捕手続には違法な点がある」と指摘しました。しかし、嫌疑があること、逮捕の必要性、逮捕状が発付されている、そのファックスを示して逮捕手続をとっていることから「違法は重大なものということはできない」としました。
しかし、身体の自由について、東京大学の教授陣の理解では、重大な違法となり、また、令状などの居住権の自由に対する侵害は警察の悪性格などが付加されて重大な違法となる、という見解をとっていると思われます。そうすると、今回は身体の自由で、しかもファックスを原本と偽り、その後石川県白山警察署は、かかるファックスを廃棄するなど違法捜査の証拠隠滅までしていることを考えると違法な重大であることは明らかではないか、と思います。
当弁護人も主に身体の自由に関わるもので重大な違法とされなければ、何が重大な違法か、とほぼ公定解釈に近い立場から論難しましたが、ファックスを原本と欺罔したことが問題であるのに、「写しを示している」などの良情状に摩り替えるのは、デュープロセスを全く意識しない判断ではないかと思います。共謀罪が制定され、犯罪の成立範囲が広がる以上、違法捜査の主張は増えることが予想されますが、本件は刑事訴訟法では極めて異例の移送まで認められるなど、起訴価値すらあったものか疑問のものをヤメ検のごり押しで無理に立件したものの、そのほころびがあちらこちらでみられるものでした。
共謀罪が成立した以上、裁判所は違法捜査には厳しく臨む必要があるのであって、身体の自由に対する侵害を正当化するために、牽強付会の理由を並べたことは遺憾というしかありません。