産経の弁護士会批判
産経が弁護士会批判をしているところがある。
しかし、あたらずともとおからずというところもあり、補足的にコメントを述べておきたい。
まず、安保法制に関しては、当事務所は、存立基盤事態法は合憲と解し、その余は違憲であると主張したが、日弁連はすべて違憲であるとの立場のようである。
しかし、憲法論という理論的視座からしかみないとこのような結論でも仕方ないと思われる。そして、民間人で憲法を「懸命」に勉強した経験があるのは、司法試験で論文まで書けないといけない弁護士のみであることは疑いようがない。産経は以下のように書いた。
「集団的自衛権の限定行使容認を自民党内でリードしたのは、副総裁で弁護士出身の高村正彦(75)とされる。高村が在籍する山口県の法律事務所代表で、日弁連副会長も務めた末永汎本(ひろもと)(77)は「それこそ十何年も前から高村は限定行使を考えていたようだ」と話し、「集団的自衛権を保有するが行使できない」としてきた憲法解釈を高村が突破したことを評価した上で、日弁連が今やるべきなのはそんな議論ではないと嘆いた。「会員も増え、それぞれの経済的基盤が非常に弱くなっている。『赤い旗』を振り回している場合じゃない」(敬称略)というわけである。
しかし、残念ながらながらポピュリズムは、保守も革新もないように思う。私が、前の事務所を辞めたのも極端かつ一方的な左派的主張に違和感を覚え、利益考量が法曹としての使命であるのにドグマを主張し続けることは「他人」の考えの宣教師になることに外ならないと考えたからである。そういう意味では、高村氏がすべて合憲と解したのは遺憾という外ないが、当事務所もすべては違憲としなかったし、現実的な利益考量は必要であるように思う。しかし、過激な発言はとりあげられやすいのもまた事実で利益考量的な帰結は保守・革新いずれからも批判されやすいので、政治からは距離を置こうとなってしまうように思う。たしかに、日弁連が、民進党と組んで有事法制の対案を出すというのもおもしろいように思うが、産経がいうように経済的基盤が弱いから正義の主張ができなくなったというのならばそれは大きな間違いである。
もっとも、インターネット版にはないが佐賀県弁護士会会長が理事者として安保法制に賛成の論陣をはって対案を示すべきと述べたものの、圧倒的多数で違憲論で述べて、あとで「あなたの意見に賛成だった」といってくる理事がいたという記事もあった。運動というのは、反対意見を許さない面があるので、リベラルさとは真逆にあるのかもしれない。この辺りは相克もあるが違和感もある。本当は、さらに補足しておきたいこともあるのだが、私は、自由さ、寛容さ、そして憲法を守る、国際関係など多角的見地から検討するということが大事だと思うとだけ述べて、産経のまだ続くであろう弁護士会批判に対する答えは差し控えることにしたい。