相続、配偶者を優遇 自宅に居住権を新設
報道各紙を総合すると、高齢化社会に合わせた相続制度の見直しを議論してきた法相の諮問機関「法制審議会」相続部会は16日、故人の配偶者が住まいや生活費を確保しやすくなることを柱とした民法の改正要綱案をまとめた。もともと非嫡出子差別の根拠とされていた配偶者保護を立法政策で保護することになったものといえそうだ。また、新設されるものとしては、相続の権利がない親族が介護に尽力しても寄与分が認められない現行法制を見直し、相続人に金銭を請求できる制度の新設も盛り込んだ。
そもそも非嫡出子が嫡出子の2分の1とされたいたのは、嫡出子と非嫡出子の関係性が悪いことを前提に、嫡出子と配偶者で配偶者の住居を守るという制度趣旨があり、これまで平成7年の最高裁が合憲と解したのもこのような理由に基づくものであった。そうすると、これまでは現金資産が乏しい場合は代償分割ができず自宅を現金化して、それぞれの相続分を支払わないといけないという場面も散見されてきた。税制上は配偶者控除が認められる中で、民法でいささか、目新しいがなぜなかったの、という制度が今更ながら作られるということになったといえそうだ。
具体的には、賃借権のような「配偶者居住権」を創設されることになりましたが、これは理論的に住宅の権利を所有権と居住権に分けるものです。したがって、配偶者居住権の設定のある建物や土地に関しては、当座ほとんど価値を持たないものの、今後の遺産分割方法の指定を事実上決定づけるものにすぎないと考えられます。
この「配偶者きょじゅう居住権」ですが、施設に入所するなど、必要性が乏しくなっても譲渡や売買ができないそうです。したがって、設定を希望する場合、施設の入所やその自宅に誰か残るのかなど総合的にみて判断しないと、かえって柔軟な遺産分割が妨げられる可能性があるように思います。
なお、居住権については価値を割り出すことができるようですが、借家権の割り方などが参考となりそうです。
ただ、配偶者居住権ができたことにより一次相続での対処が求められることになり、これまでよりも争いが大きくなる恐れも否定できないように思います。一次相続で配偶者に居住権を認めたから、こどもが多くの預貯金を相続するということが妥当かどうかというのは、立法政策上やや疑問が残るという点もあります。
また、結婚して20ね年の夫婦で、配偶者が自宅の生前贈与を受けている場合、自宅は相続人が分け合う遺産にもち戻しされず総額には含まれないことになります。これも生前贈与がなされて、持ち戻しの対象にしてしまうと、居住利益を確保が困難になるからと思われます。
さて、ポイントは、例えば、長男の嫁が介護をしたという場合、嫁自体に相続権はありません。そこで、各遺産相続人に寄与分的な金銭を請求する権利を創設することになりました。これまでは、長男の寄与分の履行補助者という位置づけでしたが、立法政策で、整理されるようになりました。
支払額は最終的には家庭裁判所にに決めてもらい、これまでの寄与分の考え方に近い運用となると考えられます。また、遺産分割で揉める原因であった生活費や葬儀費用などについての「仮払い制度」の創設も盛り込まれています。
遺言書に関する規則も見直されることになり、自筆の遺言証書については自筆以外は認められないものの、添付する財産目録についてはパソコンで印字したものも認める。また、トラブル防止をかねて各地の法務局で遺言を補完する制度も新設される予定だ。